土岐石
 久しぶりに岐阜県瑞浪市の博物館に行ってきました。本当は学芸員の人に訊きたかったのですが、不在だとみえて、もぎりのおばさん(失礼)に尋ねました。
”これは何年くらい前のものですか”
 入り口のカウンターに5センチくらいの円盤型の桂化木が置いてあったのです。
”1600万年前です”
 私の聞き間違いだったかもしれません。その時貰ったパンフには、新生代第三紀中新世(約1700万年前)と書かれていたからです。ま、この100万年の差は、スーパーで貰うつり銭の100円よりも問題はないようです。さて、この博物館に来るのは確か3回目ですが、改めて見てみると、憶えているのは虫入りコハクだけでした。中央道建設のとき出たそうですが、私が知ったのはかなり後のことで悔しい思いをしました。又、私がオークションで出したビカリヤ?は全く違うものであることも分かりました。実物は蛋白化してサイズがふたまわりほど大きいのです。まったく・・。
  実は以前の1回は十数年前で、碧玉だけを見に来たのです。3ヶ月探しても見付けられないその石をこの眼で確かめようとしたのです。そのときは、今、眼前にある2個の石のようにガラスケースにはなく、台に糸と接着剤で固定してあったようです。悪いやつがいるもので、赤碧は有りましたが、緑碧は盗られていました。ターケー・・・。
 一般に土岐石と呼ばれるものは、1700万年前の土岐砂礫層から出土する桂化木、つぼ石、碧玉、紋石などの総称で、特に人気なのは2千万年前から5千万年前に埋もれた樹木が二酸化珪素と置換して出来た碧玉、それも緑の石、と本にあります。”地球の宝さがし”という今は絶版のこの本は、以前住んでいた愛知県小牧市の図書館で見たのですが、これを書くに当たって、某日いってみると既に無くなっており、あきらめていた矢先、瑞浪の図書館で見つけたのでした。そこからついでにと博物館へ廻ったのです。
 つまり、埋もれて変成した石が1700万年前に隆起した土岐砂礫層群から今出土しているというわけです。碧玉をウッドジャスパーと書かれていますが、私を含めた一部の人には異論があってそれは、瑪瑙から碧玉に成り立っている石もあるのではないか、ということです。確かに多くの碧玉は樹木の幹や枝、根、あるいは虫の食った枯れ木のよすがが見て取れます。けれども昔、ある人に見せていただいた板は赤、緑、黄のほかに透明部分が面積の3割ほどを占めていました。どう見ても木の残痕はみえません。それに瑪瑙も同じ地層から出土しています。加えて、手持ちの石の中にも木から成った、とは思えないものもあります。又、虫喰いという表現も、文字どおり虫に侵食されたもののほかに不純物が混ざりこんだ痕跡がそのような喩えになった、のではないでしょうか。地層の隆起、下降の変動でマグマが遠ざかるため、粘土層に近い場所で徐々に冷えて出来た空隙に、染み出していた二酸化珪素が無色透明のゲル状になり流動しながら色彩を生み出すものを溶かし込み、吸収しきれない不純物は残し、冷えて固まった、というウッドでないジャスパー、と考えられます。これらは私自身はブラッドストーンに異物が溶けずに痕跡を遺している石と認識しています。しかしまあ、それほど深刻な事柄ではありませんし、本当は誰にも分かりません。
 さて、その鑑賞法ですが、研磨せず有るがままの自然石で、とされています。ここが佐渡の赤玉などの美石、青森の錦石他、加賀の錦石などとは異なる点です。(根尾の菊化石は削らないと花が出ないので磨くのが当たり前)ブラジル産のルース瑪瑙、前出の血赤石なども加工されるととても綺麗です。土岐石の碧玉も割れたものはループタイの飾りやベルトのバックルに加工されていますが、美石として研磨加工はされていません。もちろん、勝手に磨いている人は結構いますが、飾り石として通用するのか微妙なところです。
 あるがままの姿、これは土岐碧玉が詫び、寂びのたたずまいを纏っているからです。所謂、磨いた大理石と苔むした庭石の違い。前述の溶けずに絡まりあった不純物や土中で冷え固まる状態によって石の表面に独特の景色が生じています。これは日本人のみが汲み取れる幽玄、枯淡、雅趣、渋みといった感覚です。このような、典雅な銘が付けられる一握りの石の存在を尊重しすぎるあまり総てを磨かず、となってしまったのではないでしょうか。磨いても極上の石ですし、より美しさを愉しめる石も、特に青玉以外では、存在すると思うのですが・・・。 
 いずれにしろ、もっと自由に愉しめばよいと、私は思っています。
(私自身は、銘石と岩石、鉱物マニアの中間に位置し、数人の友人とのクラブ以外どこの愛好会にも属していませんので情報に疎く
一人よがりの意見かも知れませんが、お許し願います)




参考写真



ビール瓶のカケラではない








6,7センチありました








緑碧  水につけて撮影したい











ウッドジャスパーの典型 ほこりを拭いてください






広島の三越百貨店を立てるとき基礎工事の地下からでたと聞いたけど・・・。(サービスフォト)






薄緑の桂化木









赤碧の混じりこんだ半桂化木









粘土層の近くから出た。背中は砂がびっしりと付き、前面に砂の跡、瑪瑙によく見られる。









不純物が表面を覆い、特に上部はアクが吹き寄せられたよう、中は白瑪瑙で少し混じり込んでいる。









下の黄色と上の緑が流れて混じり合いながら冷えて固まった。左は混じりきらない不純物、虫食い









独特の風合い,このような石は津軽にはないべ!









独特の景色









半磨き、以前はカケラそのものだった。


以上は総て非売品